新国立劇場オペラ「マクベス」

正直、さすがの野田さんもオペラ劇場の広さとオペラの楽曲はもてあましたのかなーという印象。あまり「野田秀樹ならではの演出」というのは感じなかった。まぁ演目が演目だから、「ド派手で豪華絢爛なオペラ!」にはならないだろうとは思っていたけれど。なんというか、空間の使い方はもうちょっとやり方があるだろうと思った。せっかくあれだけの機構がある劇場なのに、一幕→二幕くらいしか大きな転換はなく、あとは同じセットをずっと回したり動かしたりしながら使い回していく感じ。うーん……。しかも、舞台のかなり手前にセットを置いてその前で大人数の人を動かすから、全然奥行きが生きないし、せっかく総勢150人(だっけ?)という大人数を動かしても、狭い場所でこちょこちょやってるようにしかみえないから、なんというか非常にもったいない。中劇場の時はあんなにめいっぱい使えたのに、なんでオペラ劇場ではこの程度しかやらないの? という印象。
っていうか、バーナムの森のあのショボさって何? コクーンで蜷川さんがやったマクベスのほうがなんぼかインパクトあった気がするんですが。いくら楽曲の制限で「バーナムの森が動けるのはほんの一瞬」だとしても、だからこそ見せ方はもうちょっと考えて欲しい気がするんですが。なんかプラスチックの書き割りっぽい板を持った人々が舞台上を横切っていくだけだなんて。あれじゃ「バーナムの森が動いた!」とは誰も思えないんじゃないかと。
ひとことで言えば、オペラの魅力であるスケール感がない!と思った。
まぁその代わり、地味とはいえきっちり歌を聴かせる演出ではあるから、目新しくはないけど作品を壊してはいないと思った。「研辰の討たれ」の時に「これは歌舞伎じゃない」と批判した人も、「これはオペラじゃない!」とは言わないんじゃないかと思ったり思わなかったり。まあ、私もオペラについては初心者なんでオペラファンの視点からの感想は解らないけれど。しかし楽曲のテンポという制限があると、野田さんらしい舞台のスピード感というのはなかなか出すのが難しいんだなーと思ったりもした。
魔女役=骸骨の人々の振付は、もうちょっと面白くなったんじゃないかなぁ。あの手の長さを生かしたムーブメントは他になにか手がありそうな気がしないでもない。途中で出てくる大きな骸骨さんたちは「Nightmare before Christmas」のジャックみたいでちょっと可愛い(下記URLの舞台写真参照)。


http://www.nntt.jac.go.jp/season/s226/s226.html

  • マクベス :ヴォルフガング・ブレンデル
  • マクベス夫人 :ゲオルギーナ・ルカーチ
  • バンクォー :妻屋秀和
  • マクダフ :ミロスラフ・ドヴォルスキー
  • マルコム :井ノ上了吏
  • 侍女 :清水華澄
  • 医師 :大澤建
  • マクベスの従者 :大森一英
  • 刺客 :篠木純一
  • 伝令 :塩入功司
  • 第一の幽霊 :青山貴
  • 第二の幽霊 :高原由樹
  • 第三の幽霊 :直野容子
作品解説
野田秀樹オペラに進出。マクベスを捕らえる魔力の深層に光を差す。
現代演劇の最先端を疾走する演出家、野田秀樹。劇団夢の遊眠社で圧倒的な支持を集め、劇団解散、留学後はNODA・MAPにおける舞台創造、さらに近年は一人芝居、多国籍俳優による『RED DEMON』での英国本格デビュー、そして歌舞伎座の新作歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』(第1回朝日舞台芸術賞グランプリ受賞)に『野田版 鼠小僧』と、止まることを知らず活動の幅を拡げている鬼才が、ついにオペラ演出に挑みます。
マクベス』はヴェルディが初めてオペラ化を成し遂げたシェイクスピア演劇。『ナブッコ』など愛国心を鼓舞する傑作を連発していたヴェルディ前期、それまでの形式の枠を超え、ドラマとしてのオペラという新境地へ踏み出した記念碑的作品でもあります。全曲を通じて原作と同じく暗鬱で劇的緊張感溢れる音楽が満ち、予言、野心、疑念、陰謀、錯乱と極限へと追い込まれていくマクベス夫妻の心理を描ききる重厚な作品です。
独特のスピード感に奇想天外な美術、演劇的アイディア満載の舞台創りの一方で、人間が古来もつ魂の叫びに迫ろうと試みてきた野田秀樹が、廻り来る死者の影に怯え破滅していくマクベスの運命をいかに描くか。マクベス役のブレンデルら強力な出演者、スタッフとの共同作業で、オペラに新たな扉が開かれます。
ものがたり
11世紀のスコットランドマクベスとバンクォーは森で魔女たちから、マクベスは王になる、バンクォーはその子孫が王位に就くと予言される。野心に燃える妻にそそのかされ王を刺殺したマクベスは、王位を手にするもののバンクォーへの予言が疑心を呼び起こし、バンクォー親子の殺害も企む。バンクォーの息子を取り逃がし、死者の幻影に錯乱するマクベス。一方マクダフは先王の遺児マルコムと共に反マクベスの旗を掲げる。

稽古風景:http://www.nntt.jac.go.jp/season/s226/s226tr.html
舞台写真:http://www.nntt.jac.go.jp/frecord/opera/2003%7E2004/macbeth/macbeth.html