ダム・ウェイター

Bバージョン→Aバージョンの順番で一気に観劇。いかにもスズカツさんらしいダンディズム溢れるBバージョン。ベッドのシーツも化学素材、パイプや鉄剤で出来たやや抽象的&無機質なセットで、いつもは2.5枚目の(失礼)浅野&高橋コンビがひたすら男くさーくダンディに演じるといった雰囲気。「部屋に飛び込んできたベンとガスが対峙した状態でストップモーション」という最後の突き放しっぷりまでいかにもスズカツさん、という感じだ。
一方Aバージョン。こちらはセットもがらりとかわり、煉瓦の壁の地下室にベッドふたつという有機的な雰囲気のリアリズムバージョン。こちらでは2枚目の堤&村上コンビがコミカルにあわてふためく感じの2.5枚目バージョン。完全にAとBで棲み分けを図った感じ。ラストもこちらは「服が汚れたり破れたり、なんだか酷い目にあったらしいガスが部屋に飛び込んできて、驚きの表情のベンと向かい合う。やがて何かを悟って受け入れたようなガスは、跪いてベンにガスの銃を受け入れようとする……」という、一応「何らかの解釈が加えられている」という展開になっていた。これだと一応Bバージョンより若干、色々裏ストーリーを想像しやすくなってる気がする。
まーなんといってもAバージョンは運良く2列目で見ていたので「二枚目ふたりをこんな間近で見られるなんて贅沢!」な気分でいっぱいだったのだけど。しかしハロルド・ピンターの作風を知らずに見に来たお客さんは最後に「???」な状態になっていた人も多かったようだ。特にBバージョンでは終演後にそんな声が多かったような……。

http://www.siscompany.com/03produce/07dumb/index.htm
翻訳:常田景子/美術:松井るみ/照明:笠原俊幸/衣装:伊賀大介/音響:井上正弘/舞台監督:二瓶剛雄/プロデューサー:北村明子
〈Aバージョン〉

〈Bバージョン〉

【公演概要】
一昨年、ニール・サイモンの傑作コメディ「おかしな2人」を男女2バージョンで交互上演し、同じ展開の戯曲を「男と女」の世界観を通して表現することで、全く違う手触りの舞台を生み出したシス・カンパニーが、またまたエキサイティングな企画をお届けします。今回は、英国の劇作家ハロルド・ピンターの初期の代表作にして不条理劇の古典とも言うべき「ダム・ウェイター」を取り上げ、キャスト・演出家ともに魅力的な顔ぶれのWバージョンでその世界に挑みます。シニカルな笑いの中に底知れない哀しさが漂うピンターの世界・・・・・。「不条理」という言葉でくくられて終わってしまいがちのピンター作品ですが、その世界は哲学的な要素からボードビル的な楽しさ等々、演劇のあらゆる要素が凝縮されたウェルメイドな世界ではないかと考えています。その代表作とも言うべき「ダム・ウェイター」は、これまで海外はもちろん日本でも古くから、多くの演劇人が挑戦してきた作品です。

そして、その公演の数だけ色々な自由なアプローチの解釈や様々な表現の世界が存在し、そのどれもが特別でユニークな世界を舞台上に展開してきました。今回、私たちも自由なアプローチでその切り口を大胆に広げ、一度の機会に2つの入口を設け、観客の皆さまに2つの世界を体験していただくことで、ナマの舞台の自由な面白さを味わっていただこうと、この公演を発表いたしました。
それぞれの出演は<Aバージョン>堤真一村上淳、<Bバージョン>浅野和之高橋克実、という、舞台・映像の両面で人気と実力を誇るメンバーたち。そして、演出を手がけるのは、Aバージョンは、自転車キンクリーツカンパニーを中心に優れた演出手腕を発揮、近年、小劇場から新橋演舞場での「おはつ」まで、幅広く活躍する鈴木裕美。Bバージョンは、ザズウシアターを主宰し、最近では「欲望という名の電車」「ベント」「リンクス」等、演出作品が目白押しの演出家・鈴木勝秀が担当し、この不思議な地下室での物語を、二人それぞれの視点から、各バージョンの役者たちのテイストを存分に盛り込んだ新しい世界に作り変えていきます。 登場人物二人だけの濃密な劇空間が創りだす不思議な世界。ナマの舞台ならではの臨場感に、新たなアプローチで挑みます! シス・カンパニーがお届けする『ダム・ウェイター Wバージョン』にご期待ください!

【Story】
地下室に男が2人。殺し屋ベンとガスは仕事の指令を待っていた。すると突然、ダム・ウェイター(料理昇降機)がガラガラと降りてくる。中には料理の注文が書いてある一片の紙切れ。彼等が持っている限りの食料を送り込むと、また何度も料理のオーダー表を運んでくるダム・ウェイター。彼等のボスは、2人に何をやらせようとしているのか。どんどん奇妙な状況に追い込まれていく2人。。。。。そして、意外な結末がベンとガスを待っている。。。。。