「若き日のゴッホ」

作品そのものは良いんだろうなぁ、でも何故日生で? パルコ劇場サイズが限度でしょうよ、この話は……。せっかくの濃密なドラマも、この天井ではすっかり空気が拡散してしまう気が。冒頭の第一幕ではアーシュラどうしても“ザ・桃井かおり”にしか見えなくて困ったけれど、終盤の変化はさすがだった。ゴッホ役・尾上菊之助氏はセリフ回しがいまひとつだった気が。慣れるまで、ちょっとセリフが聞き取りづらい。正直、演技トーンも微妙にストレートプレイに染まり切れてない印象が……。この第一幕のアーシュラ&ゴッホのかみ合わないやりとりがちょっと気持ち悪かった。戯曲が最初から「かみ合わない会話」を描いているとはいえ、演技トーンまでかみ合わないのはちょっと気持ち悪い……。そこんとこいくと、小橋賢児氏&京野ことみ嬢が普通の演技なので妙に安心感があったり。ようやく2幕あたりから慣れてきて落ち着いて観られるようにはなった。「女は歳を取らない、恋をしてる限りは」ってイイせりふだなぁと思ったけど。ただ3幕の楽しそうなアーシュラと4幕の鬱まったアーシュラの落差を観ると残酷すぎてちょっとヒドイ……。
どうでもいいけど1階席の観客の平均年齢の高いこと。これだけ若い役者が出てても、さすがにストレートプレイで1万円のチケットを買う若者は少ないってことか。役者のギャラにいくらかかってるかしらないけど、イープラスで得チケ出すくらいだったら最初から値段設定低くしておけばいいのに……と思わずにはいられなかった。私もギリギリまで観るかどうか迷ったし、周りにも「観たいけどチケットが高い」と言ってる同世代の人間が多かったしなぁ。パルコ劇場で5千円なら売れただろうに……。松本幸四郎氏の「実を申せば」もそうだったけど、歌舞伎役者が出る芝居って高すぎませんかね。いくら小劇場系の人材や若手役者で若い観客層を呼び込もうとしても、小劇場ファンに出せるチケット代は4800円が限界だということを商業演劇界の人には解って欲しい……。例外は野田秀樹三谷幸喜くらいなんだから。

詳細→http://www.nissaytheatre.or.jp/paf/main.html

作品解説
ロンドン、ニューヨークで上演されたニコラス・ライトの話題作。 『アマデウス』 『マクベス』 などで日本でも活躍するジャイルス・ブロックが演出を手がける。若き日のゴッホ尾上菊之助、下宿先の女主人アーシュラに桃井かおりが扮するほか、アーシュラの娘ユージニーに京野ことみ、下宿人サムに小橋賢児、ヴィンセントの妹アンナに池脇千鶴といった、個性あふれるキャストでこの秋待望の日本上演!
STORY
1873年、ロンドンのブリクストン。オランダ人のヴィンセント(ゴッホ)は教会の帰り道、“貸し部屋あります”の張り紙を掲げたロイヤー家の女主人アーシュラを訪ねる。美術商会に勤める彼はパリ勤務を希望しており、それまでの短い期間世話になりたいというのだ。しかしその本当の理由は、アーシュラの娘ユージニーへの一目惚れだった・・・。またこの家には画家を目指す青年サムも下宿していた。度々サムと芸術論を戦わせるヴィンセント。そんなある日、ヴィンセントはアーシュラに、夏になったら妹のアンナをこの家に滞在させたいと告げた。アーシュラへの新たな思いの目覚めの時であった・・・。
  • ヴィンセント(ゴッホ)・・・・尾上 菊之助
  • アーシュラ・・・・・・・・・・桃井 かおり
  • ユージニー・・・・・・・・・・京野 ことみ
  • サム・・・・・・・・・・・・・小橋 賢児
  • アンナ・・・・・・・・・・・・池脇 千鶴