新国立劇場バレエ「マノン」

「マノン」は夏の世界バレエフェスでシルヴィ・ギエム&ニコラ・ル・リッシュが踊った「沼地のパ・ド・ドゥ」を観て以来。全幕を観るのはこれが初めて。全体的に枯れ葉色っぽいくすんだ色合いの美術や衣装がとても素敵で観ていて楽しい。ああ、これで男性ダンサーが白タイツでなければなぁ。
「王子様とお姫様が出会ってくっついてハッピー!」みないな脳天気なストーリーではないし、なかなかドラマティックで演劇的要素が高い。レスコーが撃たれるシーンなんか、思いっきり血ノリ飛んでたし。まぁ、女主人公の生き様にはあんまり共感できないし、どっちかっつーと悪女なら悪女らしく金を一番に考えて欲しいし、恋に生きるなら恋に生きると恋人に忠誠を誓って欲しいのだけど、ま、その狭間で揺れ動くあたりが人間臭くてイイとも言えるのか。
あんまり必然性のない「見せ場のためのソロ」っていう印象のシーンが少ないので、比較的クラシック・バレエファンでなくても観てられるのでは。マクミランの振付はアクロバティックとはきいていたけれど、確かにスゴイ。男性が女性を放り投げて、空中で3回転くらいさせるような、まるでフィギュアスケートみたいなワザまで出てきた。失敗しないのかとハラハラするような危険なワザに見えるのだけど。すごーい。でも全体的には主演コンビのリフトがなめらかに見えないシーンが多い気もした。バレエは専門外なので詳しくないんだけど、あんなもんじゃないよねぇ? もうちょっと重力を感じないなめらかなリフトを見せて欲しかったのだけど。
それにしても、一番安い4階席から観ていたので舞台が1/3ほど見えなかったのが残念*1。あの内容ならもっとイイ席で観てもよかったなぁ。一番高いS席でも10,500円だし。マクミランの「ロミオとジュリエット」はまた新国でやるらしいのでそっちも観てみようと思った。たぶん「マノン」もまた再演されるだろうけど、キャストによってはS席で観てみたいかも。

詳細→ http://www.nntt.jac.go.jp/season/s205/s205.html
【スタッフ】
振付     :ケネス・マクミラン
芸術監督   :牧 阿佐美
指揮     :バリー・ワーズワース
音楽     :ジュール・マスネ
編曲     :レイトン・ルーカス/ヒルダ・ゴーント
演出     :モニカ・パーカー/パトリシア・ルアンヌ
監修     :デボラ・マクミラン
舞台美術・衣装:ニコラス・ジョージアディス
証明     :沢田祐二
舞台監督   :森岡 肇
装置・衣装提供:英国ロイヤルバレエ
管弦楽    :東京フィルハーモニー交響楽団

【キャスト】
マノン     アレッサンドラ・フェリ
デ・グリュー  ロバート・テューズリー
レスコー    ドミニク・ウォルシュ
【作品解説】
新国立劇場バレエ2003/2004シーズン最大の話題、新制作演目『マノン』がいよいよ登場します。
アベ・プレヴォーによって書かれたマノン・レスコーの物語は、プッチーニやマスネがオペラにしたのをはじめ、絵画や映画の題材としても幾度も取り上げられています。時代を越えて芸術家たちの心を捕らえて離さないファム・ファタル"マノン"。バレエ版『マノン』は、ケネス・マクミランが英国ロイヤルバレエの芸術監督の任にあった1974年に初演されました。そのスケールの大きさと身体表現の奥深さは20世紀グランドバレエが到達した最高峰にもふさわしく、世界の名だたるバレエ団がレパートリーに望み各地で上演される人気作品となっています。
マクミランの振付は、原作が書かれた18世紀フランスの最も華やかだが道徳的には退廃した社会を巧みに視覚化し、そこに生きるマノン、神学生デ・グリュー、マノンの兄レスコーといった人間たちの複雑な内面を浮かび上がらせます。なかでも物語を突き動かしてゆくのはマノンとデ・グリューの純愛。当時の世相そのままに、恋に溺れ、贅沢と快楽を求め、ひたすら破滅へと落ちてゆく若い二人の愛と死のドラマは美しくかつ壮絶、マクミラン独特のアクロバティックなリフトを多用したデュエットの数々が、ジュール・マスネの美しい旋律と溶け合って二人の心情を見る者に強く訴えかけます。
2001年の『ロメオとジュリエット』に続き新国立劇場バレエ2本目のマクミラン作品。当代のマクミラン・ダンサーを世界中から選りすぐった万全のキャスティングで創出する濃密な物語世界にどうぞご期待ください。

*1:前の列にいたじーさんが思いっきり手すりに寄りかかるくらい身を乗り出して観ていたので、すっかり上手1/3のエリアがふさがれて見えなくなってしまった。あまりにヒドイので休憩時間に丁重に「すみません後ろの人が見えなくなるので乗り出さないでいただけますか?」とお願いしたのだけど、恐縮する様子もなく「あーはい」みたいな雰囲気。こいつ、わかっててやってる……! 一瞬、「殺すぞ。ていうか突き落とすぞ」と思った。高さのある席では後ろの席の人のために乗り出さないのが観客のマナーです。自分のことしか考えてない人は後ろの人に殺される危険があるので気を付けましょう