ク・ナウカ「マハーバーラタ 太陽の王子ナラの冒険」

悲劇作品の多いク・ナウカにしては、めずらしくハッピーエンドのおめでたいお話。面白かった。東京国立博物館東洋館地下1階で上演、という場所に惹かれて見に行ったのだけど(ク・ナウカは劇場以外のところでやる公演のほうが面白いと思う)、案外この演目は神社仏閣の境内で上演するのが似合ってるんじゃないかなぁと思ったりして。ちょっとねぶたを思わせる壁面がぐるぐる動いたり、オリエンタルな影絵とかも使われていたり、歌舞伎や狂言あたりの古典芸能の手法が多用されてるということもあるけれど、なんというか、昔のお祭りなんかで奉納するために作られたおめでたいお芝居、といった印象。必要最小限の照明以外は、打楽器中心の生演奏も含めすべてアナログな手法や演出なので、ハコにとらわれずどこに持っていっても上演できそうな演目なんじゃないかと。物語はインド古典だけど、衣装が真っ白で和風な感じなので、日本の古代神話でも見てるような感じ。なるほど、奈良皇子ね。まぁそれにしても美加里さんのお美しいこと……。神様がこぞって求婚したという設定のダヤマンティー姫がよくお似合い。
前に東京都現代美術館茂山家やった狂言「クローン人間ナマシマ」の時は、天井が高すぎて声がホールの後ろまできちんと届かなかったんじゃないかという気がして、今回もそこはちょっと気になってはいたのだけど。でも今回は地下なので博物館といっても天井はさほど高くなく、役者の声や太鼓の音も後ろまでしっかり響いてた。ホールの階段を登場シーンに巧く使っていたなぁ。ただあまり柔らかくない&ちょっと狭いベンチシートなのがツライ……まぁ、1時間半なのでまぁ我慢できるレベルではあったけれど。
前半はやや地味な印象だったけど、ダヤマンティー姫が婿選びするあたりからどんどん演出に遊びが増えて面白くなっていった。最後もにぎやかな踊りでしめくくって祝祭感たっぷり。楽しかった。

詳細→ http://www.kunauka.or.jp/jp/maha0311/maha01.htm
演出=宮城聰/台本=久保田梓美/演奏構成=棚川寛子
出演=美加理、阿部一徳、吉植荘一郎、中野真希、大高浩一、野原有未、萩原ほたか、寺内亜矢子、稲川光、本多麻紀、江口麻琴、大内米治、片岡佐知子、諏訪智美、加藤幸夫、鈴木陽代、赤松直美、奥島敦子、高橋昭安、たきいみき、藤本康宏、岩切宏治、キャサリン・ドイル、布施安寿香、山本智美、池田真紀子、大沢由加子、杉山夏美、春田康一
http://www.tnm.jp/doc/Guide/Dyn/emonth/emonth031104.html

マハーバーラタ
 古代インドの叙事詩。バラタ族の領土をめぐる親族間の戦争を主題とする物語にさまざまな伝承・説話などがつけ加えられてゆき、5世紀頃にほぼ現在の形になったといわれる。全18巻から成り、『ラーマーヤナ』とならぶインドの国民的大叙事詩である。後世のインド文化に多大な影響をおよぼし、さまざまな芸術作品を生みだした。またインドのみならず東南アジア各国の文化にも多大な影響を与えており、インドネシアのワヤンの題材にもなっている。今回のク・ナウカ公演では『マハーバーラタ』第3巻に語られる物語で全編中でもっとも美しいロマンスといわれる「ナラ王物語」をとりあげる。
【 あらすじ 】
 地上稀なるあでやかな姫ダマヤンティー。その姿は吉祥天にも似て、涼やかな面差し、なよやかなる肢体は、天地をも魅了した。神が姫に求婚するなか、ダマヤンティー姫を射止めたのは、日輪の御子とも謳われた人の子ナラ王。幸せな王国を築いた二人であったが、その生活は、賭博に明け暮れるようになったナラ王の手によって打ち砕かれる。すべてを賭け代にしてことごとく負け、国を追われた夫に付き従ったダマヤンティー姫であったが、ついにナラ王は、彼女をも打ち捨ててしまう。離れ離れのふたりは地上をさまよい、数奇な運命をたどるが…