劇団四季「アイーダ」
開幕したばかりの四季アイーダをさっそく観劇。入り口で大入り袋配布。中身はおみくじ。吉だった。さて作品は、さすがBWの人気作品だけあってよくできてた。初日とほぼ同じと思われる“四季的ベストキャスト”で観られたし。大味なストーリーのオペラ版に比べるとアイーダとラダメスが惹かれあっていく過程や、アムネリスも含めた三者三様の感情がきっちり描かれていて、とても解りやすくドラマティック。ただ前半が丁寧なわりに、後半はいきなりスピードアップしてエピソードが単純になっていく。終盤の展開はヅカ版のほうが面白かった気も……もう一盛り上がり欲しかったなぁ。オペラでは見せ場にあたる仰々しい凱旋シーンは全部カットされていた。まぁ確かにストーリー的には必要ないかも。
ポップアートのような舞台美術、オペラの仰々しい美術と正反対で、これはこれで素敵。ホリゾント&シルエットの多用は「ヴォイツェク」を思い出したり、アフリカの大地を表現するところでは「ライオンキング」を思い出したりしたけれど。ディズニーミュージカルだと思って油断して子供を連れて行くと、一瞬ひやりとするような濃厚ラブシーンもあり。大人の目にはどってことない程度の絡みで、しかも一瞬なんだけど……でも後ろの席の小さい子供達をつれた両親が少し凍り付く気配を感じた。
しかし、あの歌い出しと音響のタイミングを合わせるのはさぞ難しいだろうなぁ。それでもオケがテープ*1の割にきちんとあわせていて感心した。が、せっかくエモーショナルなナンバーが多いのに、テンポが正確すぎて役者が自分の感情で歌えないのは残念な気も。せっかく大阪で初演するなら生演奏にもこだわってくれと思った。
まぁ、それなりに満足はしたけれど……しかし、女性ミュージカルファン的にはいまひとつかゆいところに手の届かない仕上がりでもどかしさもアリ。せっかく女子ミュージカルファンがリピートしまくる要素が高そうな脚本&構成だというのに、そこがちゃんと生かされてなかったのが残念。ラダメスの父・ゾーザー宰相が、詰め襟の軍服をイメージしたような制服(しかも上着の裾がキレイに翻るデザインなんですわ、これが)を着たダンサーを大勢引き連れて登場する場面があるのだけど。この“ゾーザーダンサーズ”の群舞(曲名でいうとAnother Pyramidの場面)は絶対に女子ウケするシーンに違いないので、もうちょっと手足が細長くてタッパがあって軽々と踊れるダンサーを、ビジュアルにこだわって選んで欲しかった(歌なんか歌えなくても影コーラスでいいよ!)。そうすればこの場面だけを目当てにリピートするファンが多発する可能性だってあるのに……奴隷役もやるアンサンブルに兼ねさせてはいけないんじゃないかと……。まぁ皆さん頑張って踊ってらっさるんだけど、「一生懸命!」な感じが出てしまって余裕がないんだな。まぁ、まだ幕が開いたばかりなので仕方ないのかも。ゾーザーさんもせっかくだからもうちっとワルくて色気があって存在感の濃い人にやって欲しかったなぁ。正直、小物感が否めない(歌に入る直前に拍で刻んだようなセリフの言い回しになってたのは生演奏じゃないから仕方ないとは思うけど……)。
アイーダ役の濱田めぐみさんは迫力あって素敵。今回唯一満足なキャスト。ラダメスの阿久津陽一郎さん、決して悪くはないんだけど、もう少し「聡明な将軍」と「恋に不器用な男」の落差があれば女子のハートにぐっと来るのになぁと思わんでもない。アムネリスの佐渡寧子さんはまぁまぁかな。高音にもっと声量があればいいんだけど。新国のオペラ版だともうただの悪役でしかなかったアムネリスが、キュートで魅力的なキャラクターになっていた。新国・ヅカ・四季のそれぞれのアイーダで一番解釈が違うのがこのアムネリス役だった気がする。
詳細→http://www.shiki.gr.jp/applause/aida/index.html
【スタッフ】
- 作曲:エルトン・ジョン
- 作詞:ティム・ライス
- 台本:リンダ・ウールヴァートン、ロバート・フォールズ、ディヴィッド・ヘンリー・ワン
- 演出:ロバート・フォールズ
- 振付:ウェイン・シレント
- 装置・衣裳デザイン:ボブ・クローリー
- 日本版企画・制作・歌詞・台本:浅利慶太
【キャスト】