初春大歌舞伎 夜の部

体調不良のため、一本目の「鎌倉三代記」で寝そうな気がして自主的に欠席。二本目の「京鹿子娘二人道成寺」から観劇。いやー……すごかった。すごいものを観たと思った。玉三郎さんの「道成寺」は観たことがあったし、その時も「うわーーキレーーー」とうっとりしていたものだったけど。今回の二人バージョンは二倍以上の美しさだったなぁ。最初は菊之助くんが踊って、そこへ玉三郎さんが加わってふたりで踊る……という感じで展開する道成寺。ただでさえ美形女形のふたりが、次々と豪華な衣装を変えて踊る贅沢さといったら。ありきたりな言葉だけど、まさに「この世のものとは思えない」そんな美しさ。柔らかく繊細な動きで、怖いくらい妖艶な美しさの玉三郎さん。菊之助くんは、さすがに「女らしい柔らかさ」という意味では玉三郎さんほどではないものの、逆に若さならではの元気の良い動きだった気がする。完全にユニゾンできっちり振りを揃えるというよりは、あえてずらしてそれぞれの個性を見せたような感じだった。ふたりが寄り添うシーンの美しさといったら……なんというかもう「ヤバイ!」と思った。何がヤバいのかよく解らないけれど、観てはいけないものを観てるくらいの気分。あまりの美しさにほとんど息をとめて見入ってしまい、終演後に心地よい疲れすら覚えるくらい。三階席で観ていてそんな感じだから、一階席の前のほうでみていたらきっと目がつぶれるだろうなぁ。まぶしすぎて。客席の集中力も尋常じゃなかったし、幕が引かれた後は「研辰」の時以来かと思うような大きな拍手も。思わず舞台写真売り場に直行してしまったけど、案の定いままでみたことないような長蛇の列ができていて、みんな「道成寺」の写真を買っていた。いやーすごかった。このふたりで二人道成寺やるときは、次は絶対に一等席取ろうっと。

詳細→ http://www.kabuki-za.co.jp/info/kougyou/0401/1kg_1.html
京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)道行より鐘入りまで

話題とみどころ
初々しい恋心から、艶っぽい色模様、果ては深く強い妄執まで。恋する若い女性のさまざまな表情を、絢爛たる華やかさの中で踊り抜く『娘道成寺』は、言うまでもなく、女方舞踊の最高峰です。今回は完璧な美の体現でため息を誘う玉三郎と、若く可憐な美しさが評判の菊之助による、二人の白拍子が登場します。姉と妹のような二輪の花による、まぶしいほど美しい「道成寺」となることでしょう。

花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)十六夜清心

  • 十六夜          時 蔵
  • 清心           新之助
  • 恋塚求女         梅 枝
  • 船頭三次         右之助
  • 俳諧師白蓮実は大寺正兵衛 松 助
話題とみどころ
極楽寺の所化清心(新之助)は、扇屋の遊女十六夜時蔵)となじみ、女犯の罪で寺を追われます。二人は心中を決意し、稲瀬川に飛び込みますが、十六夜俳諧師の白蓮(左團次)に助けられて、その愛人となり、清心は泳ぎが得意のため死にきれず、せめて十六夜の弔いをしようと、通りかかった小姓の恋塚求女(梅枝)の金を奪い、殺してしまいます。その場で死のうとする清心ですが、雲の切れ間から月が覗いた瞬間、ふと、思います。この犯罪を知っているのは、お月様と自分だけ。ならば・・・と、非道な悪の世界へと足を踏み入れてゆきます。江戸後期の退廃的な世相を反映した、背徳の美しさが妖しい世話物。黙阿弥ならではの、聴かせる名せりふにも事欠きません。時蔵新之助ともに初役。新しいコンビの魅力にも、未知の楽しみが膨らみます。