宝塚宙組東京特別公演「BOXMANー俺に破れない金庫などないー」

いい意味で「小劇場ノリ」な舞台。セットは青年館公演らしくちょっとショボい感じはあるけれど、その代わり演出が上手くカバーしてる。金庫破りを表現するシーンで、何人かのダンサーを金庫の鍵に見立てる演出とか、「へぇ」と思わせるような場面もあったり。自分たちが陥れられたことに気付いてからのケビン(和央ようか)の表情なんかキリリとしてかっこよかったし、スーツを何着も着替えるあたりもファンのツボを押さえてらっしゃる。ドリー(花總まり)が「金遣いの荒い病気の母親を抱えてとにかく働かなきゃ生きていけない」って設定はちょっと現代的でビターだなぁ。宝塚に夢を見に来てる人にはちょっとアレかもと思わないでもなかったり。ま、でもその病気の母親ってのも憎めないキャラで良かったけど。なんといってもおかしかったのがディケンズ役の寿つかささん。ちょっとエキセントリックな役づくりで、終盤はひとりで笑いどころを担当していた。それから金庫技師の助手(?)かな、ルーズベルト役の十輝いりすさんもオイシイ役だったなぁ。セリフはないんだけどアドリブパートのところの相手役で、背が高くて(最初フツーに男性がいると思って見ていた)、転換の時に自ら装置を動かしていたところ(←こういう演出も小劇場っぽい)で笑いが起こってた。公衆の面前で金庫破りをして一度は逮捕されたケビンが、何事も無かったように出所してるからどうしたのかと思ったら「FBIに採用された」というのもちょっとツッコミどころで可笑しかった。現代モノは地味で退屈なことが多いのだけど、細かく笑いをとりながらテンポよくみせてくれて、なかなか楽しいラブ・コメディだった。客席も大いに盛り上がっていて、お義理でなく「本当に楽しかった!」という拍手に感じられた。これならもう一回見てもいいなぁ。面白かった。

http://kageki.hankyu.co.jp/revue/04/02_2cosmos/index.html
作・演出:正塚晴彦/出演:和央ようか花總まり、ほか

Story
1960年頃のロンドン。ケビン(和央ようか)は金庫破りから足を洗い、今はある二流の金庫メーカーに雇われている。彼の仕事は、営業兼広報担当のドリー(花總まり)と共に、銀行や金持ちの屋敷など金庫のありそうなところを訪れ、他社の金庫を客の目の前で開けてみせることだった。ケビンにいとも簡単に開けられた金庫を前に、唖然とする客。すかさずドリーが自社の製品を売り込みにかかる。ケビンを雇ってから会社の業績は急速に伸びていた。
そんな折、職人のロジャーが、新システムのダイヤル錠を使った金庫を考案する。ケビンとドリーは売り込みに奔走。ケビンは、今度はその錠が容易に開けられないものであることを証明しなければならなかった。
ある日、ドリーはサンプルの入った鞄をひったくられてしまい、ケビンが犯人を追うが取り逃がしてしまう。製品の発表を急ぐ彼らを尻目に、他社が新しい金庫の展示発表会を告知した。あろうことか、その金庫にはロジャーが考案したダイヤル錠が使われていた。彼らは引ったくり犯から錠のサンプルを買い取ったに違いないが、それが仕組まれたものなのか偶然なのか……。
ケビンとドリーは会社を解雇されてしまう。ドリーは、病に伏す母親のために、かねてより求愛されていた実業家ディケンズ(寿つかさ)との結婚を決意する。そして、ケビンにはかつての仲間から仕事の誘いが舞い込むが……。