「燃えよ剣」(昼の部)

※ちょっとネタバレあります、未見の方は注意。
初日に3階の安席から観劇。まぁ、明治座商業演劇だし、こんなもんかなーという印象。新感線を観た後では殺陣も舞台転換もなんか生ヌルーく感じるけど、“明治座演劇”としてはこれでも頑張ってるほうかも。司馬遼太郎の原作にのっとり、多摩から五稜郭までをダイジェストで脚色。でも悲壮感たっぷりで涙ナシでは読めない原作にくらべると全体にコミカルな雰囲気で、だいぶユーモラスな演出になっていた。土方の最期もいままで死んでいった仲間たちが笑顔でお出迎え*1という明るいラスト。ま、明るい気持ちで劇場をあとに出来るという意味では、商業演劇として正しい演出か。これも上川隆也ファンでなければS席12,000円はちょっと高いとは思うけど、3階席でもよく見えるからB席5,000円ならほどほどのコストパフォーマンスかも。
役者さん。上川さんの土方はファンでなくとも格好良く見える。三幕目、髷を切って短髪になり洋装で登場した時には内心「おぉ、かっこいいじゃん」と思ったのだけど、客席からも「おぉぉー」と低い歓声が上がっていてちょっと可笑しかった。原作で前半にある女に対する鬼畜な所はばっさりカット。完全に「女に不器用な男」という設定になっていて、大河ドラマで山本耕司がやってる鬼畜&好色な土方とは正反対。ちょっと土方美化しすぎかとも思うけどまぁ座長公演だし良しとしよう。近藤勇役の風間杜夫氏、正直土方と幼なじみという設定には歳が離れすぎてるだろうとは思うし、ややバカ殿気味な雰囲気なので近藤ファン的にはどうなんだろう? と思わないでもないけれど(まぁ原作でも近藤はちょっとそういうテイストがある気はするけど)、豪放磊落で愛嬌のある雰囲気なので、浪士たちが近藤についていく気持ちがわかる。そういう意味では大河で香取くんがやってる近藤よりは腑に落ちる感じ。土方とのキャラの違いも解りやすくてバランス的にはいいし、決めるところは決めてくれる。小劇場役者が多い中、大劇場に見合う存在感と貫禄で安心感があった。沖田役の葛山信吾さん、表情まではよく見えなかったので解らないけれど、セリフは聞き取りやすくて好演。ライダー系俳優という認識しかなかったので20代前半かと思ってたし、「若いのに落ち着いてるなー」とか思ったけど、よく見たら私より年上なのね、失礼。しかも仕事歴みてみたら結構キャリアあるし。……ていうか真珠夫人のあの人か! ごめん、今気付いた! 

http://www.meijiza.co.jp/info/2004/05/main.html

出演・配役

木村靖司 新納敏正 朝倉伸二 若杉宏二 築出静夫 平良政幸 鈴木省吾 江端英久 平野くんじ 市川楓人 唐橋充 西村仁 森山栄治 林洋平 弘中麻紀 風間水希 斉藤レイ 井関佳子 日高恵 東虎之丞 幸野友之 山根祐夫 甲斐浩 鎌田栄治 宮川康裕 大村美樹 薛宏美 安藤さくら

作品解説
日本が大きく生まれ変わろうとしていた幕末。その激動の時代に突如現れ駆け抜けて行った男たちがいた。彼らの名は新選組───「鬼の副長」と怖れられた土方歳三と、近藤勇沖田総司ら剣に生きた男たちの友情の物語。司馬遼太郎の名作「燃えよ剣」、今回は土方歳三役にドラマ「大地の子」「白い巨塔」などで好演の上川隆也が挑みます。

*1:うしろにずらりと並ぶ人々の前、センターに立つ土方……という絵には一瞬「レ・ミゼラブル」のカフェソングかと思ったり、巨大な桜の大木の前で桜吹雪の中のラストシーンという意味では「阿修羅城の瞳」かと思ったり、いろんなデジャブが……