劇団本谷有希子「石川県伍参市」

家にひとり引きこもって『殺戮リスト』をつけている青年・ジュン(富岡晃一郎)が主人公。友人の北居君には、ジュンの家に自分の気に入った人間を集めたがる癖がある。その一方、外では無差別殺人が起こっていて……といった話。つまんなくはないし、ライオンキングのパロディで濡れ場ってのは結構笑ったんだけど、全体的に「どこかで観た感」が否めない気が……。まぁでも、役者が前に観たときよりもレベルアップしてるし(というか客演が多いから当たり前か)、作品そものものは良くできてた。この値段で観る小劇場としては完成度は高かったんじゃないかと。
ただどうしても気になる点が。北居君がジュンに向かって投げつける「他人を巻き込んでお前は一体何がしたいんだ……」といった内容のセリフがあって、多分これは作者が自分自身に向けた刃でもあると思うのだけど。ラストでジュンが出した答えというのが、「中途半端であることこそ僕の個性だ」みたいなセリフで、それはちょっといかがなものかと……まぁ、ここんとは作者自身の意見と切り離してこの物語の主役のセリフにすぎないにしても、せっかく「自分自身に向けた刃」をこういう形でかわすのはあんまり感心しないなぁ、と。そこんとこ痛々しいくらいにちゃんと自分自身との折り合いとして描ききって欲しかった気がする。ちょっと残念。
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