少年王者舘 KUDAN Project「真夜中の弥次さん喜多さん」

ナンセンスで、笑えて、哀しくて、切なくて、愛おしくて、怖くて、ゾッとして、びっくりして、虚しくて。そんな気持ちが次々と沸いてくる作品。初演を観て、その年のベスト3にランクインしていた傑作の再演。さほど間をあけずに再演になったとはいえ、前回「あぁもう一回みたかった」なんて思っていたくらいだから「待ってました!」な気分。初演の時とさほど変更点があるようには見えなかったけど、もともと完成度のかなり高い作品だったし。いやはや満足。
舞台はたたみに障子の部屋。布団がひと組しいてあって、弥次さん喜多さんがその上でうだうだしている。伊勢参りに向かう途中の旅籠で、雨に降り込められて先にすすめなくなってるふたり。同じ会話を何度も繰り返していることに気づいたり、世界がリアルじゃねぇとぼやいてみたり……。不条理な悪夢を観ているようで、でもその酩酊感がなんとも気持ちよくて。なんだかもう「このまま何時間でもこの空間に浸っていたい」なんて気分になってくる。ヤク中から抜け出そうと必死の喜多さんも、時空の狭間に行ってしまった喜多さんにおいてけぼりを食って途方に暮れる弥次さんも、なんだかもう哀しくて愛おしくて。いい年した男ふたりを可愛いなんて思ってしまう。「なぁ……どうする?」という弥次さんの仕草が面白すぎて目に焼き付いちゃってる。
最初に観たときはもうすっかり煙に巻かれた気分でいたけれど、改めてよく観てみるとメタ演劇としてよくできてるんだなぁと感心。もちろんそんなことを頭つかって考えなくても、単純にバカバカしさに笑ったり、演出上の仕掛けにびっくりしたり。まぁ好き嫌いは別れる雰囲気には違いないけれど、それでもこの完成度は一見の価値があると思う。千秋楽は立ち見がごっそり出るほどの盛況だったけれど、公演期間前半はかなり余裕があったとか。もったいない……

詳細→http://www.theaterguide.co.jp/C_Web/200312/20031209001.html (公式サイトではすでに情報がなくなっていたのでシアターガイドのwebチラシにリンクしています)

解説
しりあがり寿の名作『真夜中の弥次さん喜多さん』『弥次喜多 in DEEP』(手塚治虫文化賞受賞)の舞台化。国内だけでなく、2003年中国3都市ツアーでも圧倒的高評を得た傑作二人芝居。熱烈なる再演希望の声に応え、特別アンコール公演。

※上演台本は雑誌「テアトロ」2004年2月号に掲載