「美しき者の伝説」

出来や作品そのものは悪くないと思うけど、大正デモクラシーあたりの時代背景がわからないと半分も伝わらないんじゃないかと思ったり。日本史で習ったはずなのに全然忘れていたので芝居を完全に理解できたとは言いがたく……開演前、はやめに入ってパンフである程度予習しておけば良かったと思った。演出トーンや役者の演技はわかりやすいし、場面ごとの情感とかはもちろん伝わってくるのだけど。ちゃんと時代背景やそれぞれの登場人物の背景を知っていたら、ラストできっちり感動できたんじゃないかなぁ、と……。

しかし、一番ラストのシーンは明らかにいただけない。ユーミンの「春よ来い」が流れ、逆光の照明紙吹雪の中、登場人物が客席に向かってセリフを群唱……思わず心の中でつっこんでしまった。

第三舞台か!」

……と。終盤までの新劇っぽさが一気に80年代小劇場になってしまって、なんともはや。そういえば関東大震災直前の場面のスローモーションは遊眠社みたいだったなぁ。
役者さんはさすがにみんな悪くない。プロデュース公演のわりには、演技トーンが統一されてる気がした。最近演技トーンがばらばらの作品ばっかり観てしまったせいか、その辺は良かったと思った。

http://www.siscompany.com/03produce/06utsukushi/index.htm
1968年の初演以来、多くの演劇人の手によって上演され、語り継がれてきた宮本研の名作「美しきものの伝説」。この物語は、大正デモクラシーが息づき、新しい文化に彩られた時代を、理想のため,未来のため、愛のために、燃え尽きんばかりに生死をかけ生き抜いた人々を描いた、激しく熱い青春群像劇です。
登場するのは、大杉栄伊藤野枝平塚らいてう島村抱月松井須磨子小山内薫など、昔、日本史の教科書で目にした歴史上の人々ばかり。彼らは、後年ベル・エポックと謳われた大正期に、政治・社会運動や芸術分野で時代の最先端を走っていた人々でした。
その後やってくる暗黒の昭和を予感させる政情の変遷の中で、彼らは、おのれの理想と社会の現実に悩み、苦しみ、そして、情熱的に愛を語りながら、未来に希望と夢を抱き行動します。
時には愚かしく、滑稽で、哀しくさえある、そのひたむきな姿。その姿は、時代背景や史実を超え、私たちの心の奥底に眠る「何か」に語りかけ、問いかけてくるのです。
出演は、段田安則キムラ緑子浅野和之高橋克実、深浦加奈子、田山涼成羽場裕一をはじめとする、昨今の映像メディアでの『舞台出身俳優ブーム』の、言わば先駆けともいうべきメンバーたちが勢ぞろいします。そして、演出には、自身の劇団M.O.P以外の演劇活動やテレビドラマの脚本執筆など、近年精力的な活動が注目を集める<マキノノゾミ>を迎えます。