「カメレオンズ・リップ」

客席に入るなり、なんかいつもと違う空気。明らかに蜷川さんとか野田さんとか見に来るようなコクーンの客とは違うなー、ナイロン100℃を見に来るような下北沢の客とは違うなー、という空気。なんというか……「堤真一見に来ました!」「深津絵理見に来ました!」って感じ。多分、演劇ファンではなくタレントファンが多いのだろうな……という空気に、軽く落ち着かない感じ。最初の30分くらい、笑いのタイミングが“ナイロンの客”と違うことに違和感を覚える。「え、そこで笑うの?」「え、ここで笑わないの?」という状態が続いて、なんだか気持ち悪い。別に「客層が悪い!」とかいうつもりじゃないんだけど、なんというか「自分のテリトリーじゃない場所に間違えて来てしまった」居心地の悪さが続いて、物語に集中するまでにやたら時間がかかってしまった。右に座ったおばちゃんふたりはずーっっとしゃべってるし、左に座ったカップルは芝居始まってるのにずっとサンドイッチ食べてるし。注意してやろうかと思っていたらすぐに食べ終わったので、まぁいいやと我慢していたところ、男は次にガサガサと菓子パンみたいなの出して食べ始めやがった! なんかもう怒るのを通り越して呆れてしまった。アホかと。バカかと。つーか食い過ぎ。歌舞伎座や演舞場ならともかく、マナーも守れないヤツはコクーンにくるな!
気を取り直して芝居の感想。ま、関係者のみなさんがこてんぱんに言うほど悪くはないと思ったけれど、一行レビューなんかで褒められてるほどには面白くもない、そんな感じ。ケラさんの作品にはそりゃあ理詰めのコンゲームなんて求めちゃぁいないんだけど……でも、やっぱり前半は長すぎると思うし、後半も謎解きがあっけなく終わってしまってなんだか拍子抜け。落としどころをあそこに持っていくなら、2時間でいいよね? 前半30分で良かったよね? という感想。ラスト、雨の中を「あはは」「うふふ」と駆け回って抱き合ってキスする堤真一深津絵理……って、やっぱり「堤と深津を見に来た客へのサービス」なんだろうか。あればっかりはケラさんの芝居とは思えなかった。

http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/c-lip/
【作・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【キャスト】堤 真一、深津絵里生瀬勝久余貴美子、山崎 一、犬山イヌコほか

作品解説
2004年2月、数々の演劇賞を総なめにした演劇界の異才ケラリーノ・サンドロヴィッチが作、演出でシアターコクーンに初登場します。
ヨーロッパだろうか?定かではない何処かの国の木々繁る森の中に建つ一軒の古びた豪邸。稀代の詐欺師ルーファスと謎の訪問者セルマ。その2人の騙しあいとそこに生まれた奇妙な愛情。また同じ屋敷に住む使用人夫婦達。ある夏、某化粧品会社の女社長がこの地にやってきたことをきっかけに物語は以外な方向へと発展しゆく…。
注目のキャストは、詐欺師ルーファスに大河ドラマでも新たな魅力を見せる等、映像から舞台まで幅広く活躍する実力派堤真一、謎の訪問者セルマに「贋作・桜の森の満開の下」以来久々の舞台となる深津絵里、そしてバラエティに加え今年は「浮標」の名演が光る生瀬勝久、多彩な演技力で魅了する余貴美子KERA作品では常に独特の存在感を見せる山崎一ナイロン100℃の看板女優犬山イヌコ。実力揃いの豪華キャストが勢揃い!!
Story
人里離れた森の中の洋館に住む男は、実は稀代の詐欺師。屋敷を訪ねてきた謎めいた女と騙し合ううち、二人の間には奇妙な愛が生まれていく。そんなある日、化粧品会社の女社長が男を連れてこの屋敷を訪れたことをきっかけに、屋敷に仕える使用人たちをも巻き込んで、意外な事態が引き起こされて……。