マシュー・ボーンの「くるみ割り人形」
一幕は全体的にモノトーンな雰囲気の美術。孤児院の子供たちは、おそらくそれぞれ色んなキャラクター設定がしてあると見えて……いかん、いきなりそんな枝葉の部分をみていたらリピーターになってしまう、と、なるべくクララとドロス博士夫妻とその子供たちに注目。なんというかこのドロス博士は新感線の粟根まことさんのような目つきの悪さで……そうかと思えばクララにいじわるな子供たちは「キャンディ・キャンディ」のニールとイライザにしか見えなくて。そうかと思えばフレディ・マーキュリーみたいな人々が出てきたり。なんというかもう、マンガか新感線みたいな光景が次々と。アメリカン・カートゥーンでも見てるような気分だ。ま、そういはいっても「白鳥の湖」をもう身体に染み込むくらい観てしまった身としては、随所に「ああ、マシュー・ボーンらしいなぁ」という振付のクセが見受けられてこれはこれで楽しかったり。二幕はもうピンクと水色の「体に悪そうなお菓子の色」の世界。変なキャラクターたちとキッチュな振付ににんまり。ラスト、(ネタバレのため白地反転→)クララが想いをよせていた少年がやってきて、ふたりは手に手をとって窓から脱走……というのも、冷静に考えれば「子供ふたりで生きていけるわけがないだろう! つーかクリスマスは冬なんだからそんな薄着で外に出たら凍えちゃうよ!」と思わないではないけれど、まぁ夢のあるラストだからよしとしよう。ま、正直12000円は高いと思うんだけど、8000円なら十分満足の内容だったと思う。フツーに楽しかったし、見終わった後に幸せな気分になれるし。
公式サイト:http://www.nut-cracker.jp/ (以下、公式サイトより引用しています)
- 作品解説
- 古典バレエの名作を、斬新な解釈で現代に蘇らせる演出/振付家、マシュー・ボーン。世界最長ロングラン記録をもつバレエ作品の演出家であり、「白鳥の湖」ではイギリス人として初めてトニー賞の最優秀演出賞と振付賞を同時受賞する快挙を成し遂げた。バレエ界とミュージカル界を基点にエンターテインメント界を席巻している彼が、2002年より新たにスタートさせたプロジェクトが、ニュー・アドベンチャーズ。「くるみ割り人形」はニュー・アドベンチャーズ2作目の舞台となる。
1992年にはじめて全編振付を手がけた作品を自らの手でリメイク。2002年11月に行われたロンドン郊外でのプレビュー公演は爆発的な評判を呼び、引き続き幕を開けたロンドン公演は前売記録を塗り替え、期間限定公演ながら追加公演が急遽決定、2003年2月1日までウェストエンドの話題を独占した。全英各都市をめぐるツアー公演後、2004年3月、日本からワールドツアーをスタートさせる。「くるみ割り人形」は少女の夢や淡い恋をモチーフにした、子供から大人まで世代を超えて心に響く優しい物語。チャイコフスキー作曲の、誰しも一度は耳にしたことのある音楽にのせて繰り広げられるストーリー・バレエは、スリルと感動が肩肘張らずに楽しめる、他に類を見ないまったく新しいエンターテインメントだ。- Story
- クリスマスの夜。恐ろしいドロス博士夫妻と、その2人のわがままな子供、シュガーとフリッツが猛威をふるう孤児院。孤児の1人クララは、視察に訪れた役人からのプレゼントのくるみ割り人形を取り上げられてしまう。深夜、目を醒ましたクララが、人形がしまわれた戸棚の鍵を開けると、現れたのは等身大のくるみ割り人形。孤児たちは、くるみ割り人形が自分たちを孤児院から助け出そうとしていることに気付くと、力を合わせて大反乱を繰り広げ、ドロス一家をしばり上げて自由を手に入れる。さらに、くるみ割り人形がなんとクララが想いを寄せる少年だったことを知る。
くるみ割り人形はクララを白銀の冬の王国へと導く。夢のような時間もつかの間、くるみ割人形は突然現れたコンペイトウの精(シュガー)に心を奪われ、ボンボン王子(フリッツ)と共に行ってしまう。取り残されたクララはくるみ割り人形たちを探しにお菓子の国へとたどり着く。コンペイトウの精が、両親であるシャーベット王とキャンディー王妃にくるみ割り人形を紹介し、盛大な結婚式が始まろうとしていた。クララはかろうじて忍び込むが、閲兵に見つかり追い出されてしまう。目が醒めると、クララは孤児院のベッドにいた。夢だったのかと、虚しさに苛まれるが、現実のクララを待っていたのは…。【スタッフ・キャスト】
- 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
- 演出・振付:マシュー・ボーン
- 翻案:マシュー・ボーン/マーティン・ダンカン
- 編曲:ローランド・リー
- 装置:アンソニー・ウォード
- クララ :エタ・マーフィット
- フィルバート/くるみ割り人形 :ニール・ウェストモーランド
- シュガー/プリンセス・シュガー :ノイ・トルマー
- フリッツ/プリンス・ボンボン :ニール・ペンリントン
- マトロン/キャンディ王妃 :アナベル・ダリング
- ドロス博士/シャーベット王 :ダレン・フォースロップ
- エニド/キューピッド1 :シェルビー・ウィリアムズ
- エドウィン/キューピッド2 :リー・スマイクル
- ニコラス/ニッカボッカー :パウロ・カダウ
- ルビー/リコリスレディ :ケリー・ビギン
- チャーリー/リコリスマン1 :ジョー・コラサンティ
- ヴィク/リコリスマン2 :アシュレイ・ベイン
- ジャック/ゴブストッパー1 :サミュエル・プラント
- ボブ/ゴブストッパー2 :ジェームズ・リース
- リトル・ウィリー/ゴブストッパー3:グレン・グラハム
- ロッテ/マシュマロ1 :レイチェル・モロウ
- ティリー/マシュマロ2 :ソフィア・ハードレー
- ジョージ/マシュマロ3 :ハンナ・ヴァッサロ
- コルディー/マシュマロ4 :ミカ・スマイリー
- クレミー/マシュマロ5 :友谷真実
- 役人1/アメリア・プーク :ヴィッキー・エヴァンス
- 役人2/ハリエット・ハンバグ :レイチェル・ランカスター
- 役人3/パーシヴァル・プーク :アダム・ガルブレイス
- 役人4/ハロルド・ハンバグ :スチュアート・ロジャース