「シブヤから遠く離れて」

ま、金を払っただけの面白さはあるのだけど、やっぱり岩松作品って謎が残りすぎてなんだかなー。蜷川さんの演出でだいぶわかりやすくなってるとはいえ(妄想か幻覚か夢と思われる場面は照明のトーンを変える、とか。岩松さん演出だったら多分同じトーンでやってたんじゃないかと)、説明されてない部分が結構あるような。何もかもすべて説明しろとはいわないけど、ヒントくらいちょうだいよ、と思わせる箇所が何カ所かあるのは確か。それとも見落としたのかな。うーん。
役者はみんな好演。でも登場人物全員が「笑ってニコニコ話しているのにそのセリフの途中から急にキレて怒り出す」という役作りをしているのは、辟易するのを通り越してなんだかおかしくなってしまった。
二宮くん、アテ書きということもあってかキャラにハマった演技が好演。いい意味で、若さならではの傲慢さがにじみ出てる感じ(これは青の炎もそうだったけど)。ただちょっと、「余裕で演技してる感じ」が否めない気もするんだけど。8割くらいの力で演じてるように見えてしまって、それはそれであれだけ演じられるならスゴイとは思うものの、「そんなもんで満足してないで残りの2割見せてみなさいよ」と思わないではない。今度は現代ものじゃなく、蜷川古典で鍛えてほしいなぁ。少しだけ、藤原竜也くんとダブルキャストで「ハムレット」やってほしくなった。タイプが違って面白いだろうな、なんて。
キョンキョンは岩松さん好みの「謎の女」っぷりで素敵。勝地涼くん、出番は短いながらも落ち着いた演技が好印象。蒼井優ちゃん、ちょっと高い声のセリフが耳に刺さって最初はどうなるかと思ったけど、後半はまぁまぁ。勝村政信さん、今回は穏やかそうな役だ、よかったー、この人のテンションが高いと疲れるんだよなー、なんて思っていたら、後半でやっぱりキレたので笑ってしまった。

http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/shibuyakara/

  • 作:岩松 了
  • 演出:蜷川 幸雄
  • 出演:二宮和也小泉今日子/勝村 政信/杉本 哲太/蒼井 優/勝地 涼/清水幹生/立石 凉子 他
Story
昔、借りたお金を返そうと、その友達ケンイチ(勝地涼)が住んでいた家を訪ねたナオヤ(二宮和也)。そこにケンイチはいたものの、今は住んでおらず、そのかわりに娼婦マリー(小泉今日子)が住んでいた。そして、その家にはマリーを愛するアオヤギ(杉本哲太)、アオヤギの同僚フナキ(勝村政信)、マリーが以前住んでいたアパートの管理人フクダ(立石凉子)らが出入りしている。そしてアオヤギを心配して田舎から出てきたアオヤギの父(清水幹生)や妹のトシミ(蒼井優)らも、その家に足を踏み入れることとなる……。
作品解説
二宮 和也が蜷川 幸雄の演出でシアターコクーンの舞台に主演!!
2004年3月 シアターコクーンでは 主演 二宮和也岩松了の書き下ろし「シブヤから遠く離れて」を上演いたします。2003年 蜷川が監督した映画「青の炎」で、繊細な思春期の少年を見事に演じ、かつて無いほどに切ない殺人者を見せた 二宮和也が今度は舞台で小泉今日子を相手役に得てラブストーリーに挑みます。 演出は“世界のニナガワ”こと 蜷川幸雄。最近では演劇のみならず映画監督としても「青の炎」「嗤う伊右衛門」など話題作を生み出し、今だ止まることを知らない演劇界の重鎮。脚本は 岩松了。岩松は舞台の他テレビ・映画等でも脚本を手掛ける劇作家。淡々とした日常の中で人情の機微をおかしみとかなしみを持って描く作風に竹中直人桃井かおり小林薫など大人な役者たちにファンが多い。共演者は、小泉今日子のほか杉本哲太勝村政信蒼井優 等。個性的な面々で贈る渋谷の街を舞台にしたラブストーリーにご期待下さい!!