四月大歌舞伎 夜の部

「白浪五人男」*1を通しで観るのはこれが初めて。「へー、こういう話だったんだー」という印象。話の細やかな構造というよりは絵ヅラで見せていく感じの舞台。泥棒に入ったふたりと入られた店のふたりが実はそれぞれ親子だったと解るくだりなんか、もう、大味すぎて笑っちゃうし。なんというか、マンガだな、これは。「初瀬寺花見の場」も「極楽寺山門の場」も、セットは派手だし衣装も豪華だし。単純に有無を言わさぬ視覚効果としては楽しい。黙阿弥らしい七五調のセリフも耳に心地良いし。
役者。勘九郎さんの弁天、別に悪くはないんだけど、個人的には弁天小僧って「ヘタでもいいから若い役者にやって欲しい」役なんだよなぁ。菊五郎さん・勘九郎さん・七之助くんで観たけど、それでもやっぱり七之助くんの弁天が一番好きだった。あの衣装であの絵ヅラなんだもの、やっぱり女モノの衣装の前をはだけた弁天って、「男」というより「中性的でなんだかよくわかんない生き物」であって欲しいなあと思う。初演では19歳の菊五郎がやったというし、黙阿弥さんもそういう雰囲気を狙って書いたんじゃないかと思うのだけど。「わっちぁほんの頭数さ」と言ってるくらいだから、貫禄なんかなくたっていいんだろうし。菊之助くんの弁天が観たいなぁ。多分いいんだろうなぁ。日本駄右衛門の仁左衛門さん、カッコイイ。見得きった瞬間ちょっとしびれた。くぅ。
普段は3階席の住人なのだけど、今回はちょっと奮発して1階にしてみた。2等席最前列で観ていたのだけど、「稲瀬川勢揃の場」で揚げ幕から出てきた役者がキッと客席に見得をきるところがめっちゃよく見えて幸せだった。こりゃもう絶対に一等席よりオイシイ! なんて思ったりして。

http://www.kabuki-za.co.jp/info/kougyou/0404/4kg_1.html
青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)
通し狂言 白浪五人男(しらなみごにんおとこ)
 序 幕  初瀬寺花見の場
      神輿ヶ嶽の場
      稲瀬川谷間の場
 二幕目  雪の下浜松屋の場
      同 蔵前の場
      稲瀬川勢揃の場
 大 詰  極楽寺屋根立腹の場
      同 山門の場
      滑川土橋の場

  • 弁天小僧菊之助/青砥左衛門藤綱  勘九郎
  • 南郷力丸             三津五郎
  • 忠信利平             信二郎
  • 千寿姫/伜宗之助         七之助
  • 鳶頭清次             市 蔵
  • 木下川八郎            右之助
  • 伊皿子七郎            家 橘
  • 千原主膳/浜松屋幸兵衛      弥十郎
  • 赤星十三郎            福 助
  • 日本駄右衛門           仁左衛門

*1:オーシャンズ11」風に言うなら「駄右衛門ズ5」か……などとしょーもないことを考えながら観てしまった。