四季「エクウス(馬)」

自由劇場に行くのは初めて。春・秋劇場より浜松町駅よりに隣接してるので、デイリーヤマザキの手前で曲がるより、その手前の信号のところで左折したほうが自由劇場に行くには近いかも。ロビーはそれほど広くないけれど、まぁこのサイズの劇場ならこんなもんか。客席は春・秋劇場をそのままスケールダウンした感じで、A席(一階後方)でもステージの役者の表情はよく見えるし、二階席の床で舞台上部が遮られることもなく、値段を考えたら悪くない感じ。劇場については好印象。
しかし一方芝居の方は……、開幕してまるまる一週間たつのに、いまだプロンプ付きとはいかがなものか。看護婦役とジル役がステージシートのところで台本めくりながらプロンプやってるし……しかもその声が、一階の後ろから二列目に座ってた私のところまで聞こえるなんて。しかも受付回りに四季広報担当がごっそり出動してたところをみると、どーもこの日は関係者招待日だったようだし。招待日にそんな無様なことしてていいのかと……ぶつぶつ。
脚本はさすがピーター・シェーファー、よく出来てると思った。ある種の「信仰の崩壊」を描いてるという意味では「アマデウス」にちょっとにてるな、と思ったり。宗教・精神病理といった小難しくなりかねないテーマを“演劇的”に面白く見せてくれる。
演出や美術その他は、いいところもあれば悪いところもあるという感じ。ボクシングのリングか法廷を思わせるような抽象美術はいいんだけど、役者の演技が思いっきり新劇っぽい「芝居がかった」演技で、慣れるまでどーにも落ち着かない。ミュージカル見てるときはそれほど気にならなかったけど、ストレートプレイで見ると母音法とはこんなに気になるモノだったのかと思ったり。一幕モノのリアル美術なら多少新劇チックでも見てられるんだけど、こういうセットでこういう話だったらもう少しリアルな演技で見てみたい、個人的には。とはいえクライマックスのアランが馬の目を刺すシーン、あそこは野田さんや蜷川さんじゃなくたってスローモーション使ってほしいなぁ。裸の少年が客席におしりをさらしながら一生懸命ジャンピングサーブの練習してるみたいな演出は……ここが一番の山場だと解ってはいても、やっぱり笑っちゃうよ。もっと残酷で美しいシーンであってほしいんだけどなあ、ここ。
ダイサート役の日下氏、どーも開幕直後や休憩直後の、「芝居の波に乗るまで」の数分間の間、セリフ回しが微妙にアヤシイ。いつつっかえるかとハラハラするような瞬間もあるし、これでは観客が芝居に入り込めません。まぁ、はじまって10分もたてば流れるようにセリフが出てくるようになるからいいけど……。ラストのセリフも一本調子なのがちょっと気になる。物語のテーマを聞かせる一番重要なセリフなのに、あんな流すみたいに言われちゃぁ……。もっと観客の気持ちに届くようにセリフはしゃべってほしい。
アラン役の望月氏、声の出し方が誰かに似てるなーとおもったら多分井上芳雄氏に似てるんだな。まぁ「四季」という枠の中で考えれば決して悪くない演技だとは思うけど、もーちょっとナチュラルな演技のほうが個人的には好み。
別に裸になるシーンがあるからって言うワケじゃないけど、藤原竜也アランと役所広司ダイサートとかで観たい作品だなーと思ったりした。四季以外でもやってくれないかなぁ、せっかく面白いホンなのに。

http://www.shiki.gr.jp/applause/equus/index.html

  • マーティン・ダイサート:日下武史
  • アラン・ストラング:望月龍平
  • フランク・ストラング:武見龍磨
  • ドーラ・ストラング:丹 靖子
  • へスター・ソロモン:木村不時子
  • ハリー・ダルトン:立岡 晃
  • ジル・メイソン:井田安寿
  • ナジェット:右田 隆
  • 看護婦:岡山梨都子
  • 馬たち:近藤貴久,鈴木孝紀,近石博明,古野健,渡邊今人

ストーリーはこちら参照