劇団☆新感線「髑髏城の七人〈アカドクロ〉」

初日行ってきました。97年に再演された「髑髏城の七人」は、いまんとこ自分の中の芝居ランキングベスト5に入るくらいの大好きな作品なので、そもそも再演そのものに嬉しいような見たくないような複雑な気分。しかも主演のお方がこの7年にぶくぶくと肥(中略)で、なるべく期待しないようにしよう……と、自分に言い聞かせて劇場に向かったのでした。
今回の〈アカドクロ〉は新感線の舞台にしては歌も踊りもほとんどなく、作りとしてストーリー中心に見せた「アテルイ」に近いかも。今回はそれぞれの登場人物をきっちり見せていく感じで、それぞれのキャラクターの思いがちょっと泣ける。武士たちの天下争いに巻き込まれた名もない庶民の悲哀、というテーマが強く前面に出ている感じ。97年の時はどっちかというと「戦国時代の戦乱の中で強くしたたかに生きていく人々」という明るいトーンだった気がするけど、今回は怒りや悲しみといった感情のほうが強かった気がする。多分、秋の〈アオドクロ〉のほうが97年版に近いテイストになるのかな、と思ってみたり。97年のときはとにかく捨之介&天魔王が格好良くて刀を研ぎながらの100人斬りと蘭兵衛のそろばん殺陣が印象に残っていたのだけど、今回は群像劇としての色合いが強い気がした。
ま、これはこれで良くできてるしもちろん面白かったのだけど……初日の罠かな、古田さんがセリフ噛みすぎ! 所々滑舌悪いのかセリフをごまかしているのか何を言ってるのかわからない所もあって、97年版を思い出しながらじゃないと観られない箇所もあった。ちょっとこれでは初見のお客さんに不親切。残念。楽日は噛まないといいなぁ。
役者さんについて。沙霧の佐藤仁美ちゃん、「スサノオ」のタケハヤ役が良かったので心配はしてなかったけど、今回も好演。捨之介と年の差がある分、「捨之介もなんだかんだ言ってこの子には手を出さないだろう」という安心感(?)もあったり。極楽太夫の坂井真紀さん、前半を観てる間は「高田聖子さんのインパクトには敵わないなぁ」と思っていたけれど、後半で兵庫と親密になっていく過程が自然でイイ。もう少し色気があるといいんだけど。蘭兵衛役の水野美紀さん、今回唯一の美形キャラか。まだちょっと演技が固い気はするけれど、「アテルイ」の時に比べたらだいぶ動けるようになったと思った。ところどころ動きがキマる瞬間がとてもキレイで、もっと余裕が出れば良くなるだろうなぁと思った。あと天魔王との関係性も、せっかく「男女の関係」なんだから理性と感情の狭間でもう少し複雑な表情を見せて欲しいところ。胡蝶とのあいだにも女ならではの嫉妬心とかいやらしい部分があってもいいんじゃないかなぁ。
男性陣は予想以上に良かった。家康役の佐藤正宏さん、いかにも「狸親父」というとぼけた味が良かった。そして久々の舞台復帰、お帰りなさい! の梶原善さん。「めんどくせぇなぁ」が口癖の飄々とした贋鉄斎が良かった。女性陣が全体的に気合いはいりまくりの一方で、いい感じに力の抜けた演技で「いい意味での箸休め的存在」。いのうえ歌舞伎で刀鍛冶といえば飛び道具みたいな笑わせキャラばかりだったのだけど、全然違うアプローチで役作りしていて好印象。
野田秀樹ばりに奥行きを使った舞台、今回も照明が凝ってるのでこの劇場では2階から観たほうがキレイかも。初日は4列目からみていたのだけど、舞台の奥の方はよく見えなかった、残念。

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