「ユーリンタウン」

これも「誰も幸せにならない」公演じゃないのかな……。キャスト・スタッフともにそれぞれひとりひとりは誰も悪くはないと思うけど、企画そのものの時点で……。なぜこの作品を日生劇場みたいな劇場でやろうと思うのか。多分日本で帝劇の次くらいにこの作品が似合わない劇場だと思うのに。日比谷で見るような芝居じゃないんだもの。笹塚スタジオあたりで串田和美さんの演出でみたかったなぁ。まぁ笹塚が無理でも、せめてスズナリ。採算のこと考えるなら、歌舞伎町どまんなかのシアターアプルでもいいや。クラッドウェルあたりはベテランでもいいけど、革命軍側の人間は素人とか無名の役者とかでいいのに。なんなら日藝NAPでやってくれ! とにかく演出は串田さんに! と思わずにはいられなかった。いや、亜門さんの演出がひどいとかいう意味ではなく、曲調といい内容といい、串田さんで見たかったのよ、私は……。
ついでにいうなら、ロックストック巡査に松尾スズキ、ボビーに阿部サダヲとかをキャスティングして(あぁこのふたりだったらどんなに面白かったかなぁ)、普段下北で芝居見てるような人々に見せたほうがなんぼかマシな作品になるんじゃないかと思った。どんなにシニカルで後味悪い話が好きな私でも、「日生劇場でミュージカルを見る」時は心構えが自動的にちょっと違う雰囲気になっているのだから。なんというか、先日の「空想万年サーカス団」に続いて、「これも観客の見たいものと作品がかけ離れてるんじゃないだろうか? 違うスタッフ・キャストで違う客層に見せたらみんなが幸せになれるんじゃないか?」と思わずにいられない公演だった。

詳細→ http://www.horipro.co.jp/UTmusical/

解説
'02年のトニー賞の主要3部門(脚本賞・楽曲賞・演出賞)を受賞したブロードウェイ・ミュージカルの日本初演。音楽・脚本以外のスタッフは日本オリジナル。
Story
20年間にも及ぶ干ばつの被害により、水が何よりも大切となった街があった。そこでは、渇水対策のためにトイレの“私的”な使用が禁止され、住民法によって公衆トイレの使用を義務付けられていた。全ての公衆トイレは独占企業ユーリン・グッド・カンパニー社社長クラッドウェル氏によって運用されていたが、抜け目のない彼は政治家と結託しこれを有料化、トイレの命運を握ることで結果的に街を支配していた。 ユーリン・グッド・カンパニー社で働く有料公衆トイレの管理人ペネロペ・ペニーワイズ(マルシア)と、その助手ボビー・ストロング(別所哲也)は、大勢の住人が列をなし、トイレの順番待ちをしながら尿意に耐えているという毎日の光景にうんざりしていたが、トイレのためのお金が無かったり、順番がくるのを我慢しきれなくて、こっそりどこかで用を足してしまう行為は、重大な犯罪として、法の番人ロックストック巡査(南原清隆)によって厳しく取り締まられていた。当初はしぶしぶ従っていた町の人々(高泉淳子、入江加奈子ら)だったが、ある日、あまりの辛さに、若き革命家となったボビーを中心に、“いつでも自由に用を足す権利”を求めて立ち上がる。自由を求めて闘うボビー。その過程で芽生える、美しいが、どこか垢抜けない娘ホープ鈴木蘭々)との恋。しかし、物語は簡単に進まなかった。ホープは、宿敵ユーリン・グッド・カンパニーの社長令嬢だったのだ……。