シベリア少女鉄道「ウォッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」

前作「二十四の瞳」があまりにも壮絶なテクニカルバカ作品だったので、正直それに比べちゃうと物足りない気も。でもまぁ、相変わらずのバカバカしさにそれなりに満足しつつ、次の公演を楽しみにしてるのだけど。
※もう公演終了したので、以下ネタバレします。再演(あるかどうかはわからないけど)を観たい人は読まないほうがいいかも。
まず会場に入ると、駅前劇場を大改造。客席が中央にあり、それを囲むように四方の壁面に舞台装置が。通常客席上手側にあたる壁のあたりがどうやらメインステージらしく、昔の日本家屋風セットが。客席もこちらを向くように置いてある。通常舞台がある壁面には、道ばたというか古びた塀がある狭い舞台。客席背後には人の歩幅の通路程度の舞台に、喫茶店らしきセット。そして客席上手(通常の駅前なら最後列があるあたり)は一段高くなっていて、会社の部長室らしきセット。大きなデスクと応接セットがある。気になるのは会場あちこちに設置してあるテレビモニターやスクリーン。8カ所くらいにあるのでどうやら今回も映像を使いそうな気配……。それにしても客席はぎゅうぎゅう詰め。王子小劇場で余裕もって観られた頃が嘘のような盛況ぶりだなぁ。
さてはじまるのは昭和25年の日本、昼メロっぽい物語。女主人公は父親に婚約者の男を会わせるけれど、何かに衝撃をうけたような父親。どうやら婚約者同士のふたりは血が繋がっていて……? と思わせぶりな展開のドラマが、4方向の舞台を使いながら約1時間。そして、スクリーンに映る大きな矢印。正面から下手に舞台が映るときには←、背面から上手に舞台が映るときは→、といった具合に、転換時に矢印が映る。
そして物語がいよいよクライマックス、という時に、大音響の音楽と共に映像がいきなりDDRダンスダンスレボリューション)風に! ここからは役者も全員マイクを手にセリフを言う。回るミラーボール、派手になる照明。あとは観客は映像の矢印にあわせて右、左、前、後ろと次々に展開していく芝居を観ていくというわけ。時々「← →」なんてのが表示されるときはどっちを観たらいいのか迷いながら。つまり、観客が積極的に「参加」しないと楽しめない芝居というわけだ。なるほど、ウォッチ・ミー・イフ・ユー・キャンとはこういう意味か……そして当日パンフの「頑張って楽しんで下さい」の挨拶はそういう意味だったのか……と納得。
さすがに初日だったのでこのDDRタイムに入ってから数カ所段取りが悪いところがあったり、照明オペのミスがあったり(矢印が出てそこで演技をしている役者に照明があたっていない)とか。まぁあの照明オペレーションは大変だろうとは思うけど……。あと、矢印が連続で出てくるところはどうもそこにあうようにセリフを言うべきはずなのに、一部の役者のセリフがすっとんでたり、など。まぁ、せりふをひとつ飛ばすともう続きを言い直すのが難しいような作りなので、役者さんも大変だとは思うけど、多分大ネタと思われるところでセリフが飛んだのは惜しかった。
まぁでも「矢印」が出た瞬間、客席に「来たぁっ!」という緊張感が走り、「DDR」がはじまった瞬間に「これかぁっ!」という笑いが起こるあの一体感は、やはりシベ少でしか味わえないモノ。次回も楽しみ。

詳細→http://www.siberia.jp/nextstage09.html

  • 作・演出/土屋亮一
  • 出演/染谷景子 横溝茂雄 藤原幹雄 秋澤弥里 吉田友則 水澤瑞恵 前畑陽平 ほか
  • 舞台監督/谷澤拓巳
  • 音響/中村嘉宏
  • 照明/伊藤孝
  • 映像/冨田中理
  • 舞台美術/齋田創(突貫屋)
  • 宣伝美術/土屋亮一
  • 音源製作/霜月若菜
  • 制作/渡辺大・高田雅士